今回は下園壮太さん著書「うつからの脱出」をご紹介します。
本書を読んだきっかけは、コロナをきっかけにうつ症状が出てしまった自分の父に対して、少しでも力になりたいと思ったためです。
2020年2月からコロナ渦になった日本。
2年経過しましたが、まだコロナは終息していない状況です。
離れて暮らす両親。定期的には連絡を取ることもありますが、頻繁には会えておらず、心配することも多いです。
少しでもこのブログの内容が、うつで苦しむ人、ご家族にうつの方がいらっしゃる人の参考になれば幸いです。
うつ状態は疲労しきった状態
うつと聞くとどのようなことを想像するでしょうか。
「心が弱い人がなるもの。」「心の病気。」などいろいろな考えがあると思います。
本書ではうつについて、
「人が疲労しきった状態であり、疲労しきったからだを守るための生命の緊急対処プログラムである<感情のプログラム>が一斉作動した状態である。」と説明をしております。
3つほど例を挙げて、もう少し説明をします。
①戦場
「いつ命が奪われるかもしれない悲惨な戦場では、人は35日で疲れ果て、正常な反応をしなくなる」と1944年にアメリカのスワンドらが研究発表をしました。
その報告では98%の人が戦場での精神的肉体的な消耗により何らかの異常をきたしたとのことです。
一方残りの2%は自分を保持できた人は、平和な社会では凶暴性があり危険人物とされていた人です。
つまり戦場のような非日常な状況であれば、どんな人でも消耗し、本来の自分ではなくなっていく。”別人”になってしまうのである。
②原始人
原始人が薮をかき分けて進んでいると、突然熊に遭遇したとしよう。
熊と目が合う。このとき、原始人のからだの中に一瞬にして次のような反応がおこる。
まず目は、暗闇でも相手がよく見えるように、瞳孔が開く。
これから予想される戦いでの出血をおさえるため、毛細血管は縮み、その結果、顔面蒼白になる。
さらに、血液はすぐに固まりやすいように〝どろどろ血〟になる。
しかし、戦うにしても逃げるにしても激しい運動を予定するので、からだの大きな筋肉に血を送らなければならない。
細くなった血管にどろどろ血を送るために、心臓はかなり無理をする。
どきどきを感じるのだ。
消化管(胃や腸)は、活動を休止しエネルギーを他へまわす。その結果、のどが渇く。胃が痛くなる。
肩や首の筋肉は衝撃に備え硬くなり、手や足の表面には、滑らないように汗をかく。
頭の中は真っ白になり、動物的な勘だけで〈逃げる〉か〈戦う〉かが一瞬のうちに選択される。
疲労した状態は、外敵に襲われやすい。 熊に襲われないように、細心の注意を払う必要がある。
とくに危険な夜間に眠らないようにする必要があった。
不安が強くなると夜眠れないのは、眠れないのではなく、眠らないプログラムがはたらいているだけなのだ。
物事の最悪を考えつづけるという機能もある。最悪のケースをシミュレーションして、少しでも危険があれば、その行動をとらないという用心深さが必要だったのだ。この機能をもたない原始人は、「大丈夫だろう」と水を飲みに行き、熊に襲われた。
私たちが手に汗を書いたり、ドキドキしたり、夜眠れなくなったり、最悪のケースを考えることは、我々人類が危険な状態から生きていくために、必要な生命維持活動ということであり、もしこの機能がなければ人類は滅びていたのかもしれません。
③車の運転
車を運転しているとき、知らぬ間に肩の力が入り、手に汗をかき、口が渇いてくることはないでしょうか?
特に夜間よく知らない道を、到着ぎりぎりで運転しているとは、肉体的には大して運動していなくても、心身ともにぐったりと疲れることはあると思います。
上記の三つの例を通してお伝えしたいことをまとめさせていただきます。
1.戦場の例で挙げたように、非日常の過酷な世界では、ほとんどの別人になってしまうということ
2.原始人の例では、危機的な状況下で心臓がドキドキしたり、夜寝れなくなったり、最悪のケースを考えてしまうことは、我々人類が生きていくために必要なこと
3.車の運転の例では、現代の生活でも状況によっては、精神的に疲れるということは誰もが経験をするということ
この章では、上記のことをご理解いただければと思います。
認知療法を始める前の5つの注意点
本書の認知療法を紹介する前に、注意点を5つ挙げさせていただきます。
悪い思考(認知)は、自分特有のものではなく、症状である
感情のプログラムがあなたを守ろうとして、極端な考え方をさせている。
本来は有益なプログラムが誤作動を起こしているだけであり、誤作動を解けば、いつも自分の感じ方、考え方に戻れる。
あなたが”悪い”と考えている思考は、少しも悪くない。白か黒かの二分割法
逆にピンチの時は二分割法で考えないと、対処のタイミングを逃してしまう。
捨ててしまいたいと思っている思考は、実は危機において自分を守ってくれる”ありがたい思考”である。
考え方や感じ方、行動の仕方を工夫をする
現実の日常生活においては、うつ状態のあなたは、その”思考”が過剰に働いていて、余計な不安、必要以上の怒り、忘れたい悲しみに困っている。そのため本来の自分に戻れるまで、一時的にその苦しさを緩和させるために、認知療法を使い考え方や感じ方、行動の仕方を工夫をする。
魔法はない
苦しいあたなた”魔法”を求めている。”魔法の薬”、魔法の医者”、”魔法のカウンセラー”、”魔法の思考(認知)”
しかしうつ状態とは精神疲労だから、疲労回復するには時間がかかる。
だから原則は、医者を変えない。薬をやめない。何回も落ち込む(回数をこなして、上がっていく)。「急がば回れ」である。
だから”魔法”を求める気持ちそのものは認めても、現実に”魔法”がないことを、何回も自分自身に言い聞かせる。
バランスが大事
どんな立派な格言も、極端になったら人間社会に適用しない。
要は”バランス”である。いい姿勢とはTPOで変わる。戦うときは、猫背で低い姿勢、相手に関心がないことを示すには、斜めにひねった姿勢など。
ある一つの姿勢で固まっていることは不自然だ。ゆらいでいることが大切。
”バランス”つまり<適当>を覚えるトレーニング
苦しければ何かを求める。それは自然なことである。「溺れるものはわらをもつかむ」のことわざの通りに。
しかし今のあなたは溺れているのではなく、溺れた恐怖を忘れられないで、泳ぎ方がぎこちなくなっている。
今のあなたに必要なのはついつかんでしまう”わら”を放すこと。
例えば、テニスのコーチは、力が入りすぎた人にはラケットはラケットを緩く持つことを指導し、逆に球筋が定まれない人にはラケットを持つ手首を固定することを指導する。
現場で個人を指導するときはその個人に応じたアドバイスができるが、そのコーチがテニスの教本を書くときは「初心者はラケット面を安定させるために、手首は固定させた方がいい」と書く。
本に書かれていることは絶対と思う人は、それを信じてもともとガチガチだった手首に「固定が足りないんだ」とさらに力をいれてしまう。その結果その人のテニスはさらにひどいものになってしまう。
一つのアドバイスを”わら”として握りしめるのではなく、まず試してみて、自分の状態に合うか合わないかを冷静に見極めてほしい。
少しづつ取り入れて、やり過ぎたら元に戻す。玉乗りのように”バランス”を取るべきである。
それでは次の章で、具体的な認知療法をご紹介します。
13の認知療法
色々な自分を認めよう
自分自身を見つめ直し、自分の中になる不安や呼吸、動作を意識して改善を図る4つの方法を紹介します。
①エコグラム
自分の中に複数の”自分”、つまり分身がいることを確認する方法。
目的はあなたの中の分身を認めてあげる。
「うつになると、最近本当の自分ではない」という相談があるそうですが、本当の自分などあるわけではなく、あるのはどれもあなたを支えようとする複数の気持ちである。
”本当の自分”幻想はある特定の気持ちを否定する発想であり、自己否定である。
手軽にできるように、下記にエコグラムが利用できるサイトを貼り付けておきましたので、
実際にやってみて自分の中の複数の分身を見つけてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、自分の結果は<CP低位> 「おっとりしたメイドさん」タイプでした。
②フォーカシング
苦しみを”味わう”方法
その苦しみはあなたを守ろうと必死なのである。
「この気持ちさえなければ・・・」と嫌って、無視をしようとすると「危機的な状況であることを伝えなければ」と考えているあなたの”思い”は、その症状を出し続ける。
だから勇気を出して”苦しみ”を味わう。
宿主であるあなたに何を伝えようとしているのかを聞いてみる。
①30分ほどゆっくりできる時間を探す
②今感じている何らかの嫌な感じ、引っかかる感じに注目する
③感じたものに「今まで嫌っていたけれど、本当は守ろうとしてくれてるんだね。ありがとう」とつぶやく
④何かを感じたら、その苦しみを味わう
⑤その苦しみを言葉で表現してみる
⑥その”嫌な思い”に名前をつけてみる
⑦その言葉がその感じにぴたりとくるか、もう一度味わう
⑧名前をつけ終わったところで、もう一度その”思い”を味わってみる
⑨その”思い”とともにしばらくボーっとしてみる
③数え呼吸法
自分の呼吸を100まで数えるだけのトレーニング
④動作法
身体を意識的に緩めることにより、様々な効果をえようとする方法
毎日の停滞感を乗り越える
何の変哲もない日々を、有意義に過ごす2つの方法をご紹介します。
⑤細切れ目標達成法
自分が気に入る目標を選んで、細かく分解をする方法
早く元気になりたいと思っていた場合、具体的ににどのようなことか考える。
仕事に復帰すること、薬をやめること、テニスができること、不安がなくなること…
多くの目標を持つことはリハビリ期の方には、良い戦略ではないため、自分がに気に入る(”大切”や”やりやすい”)目標を設定する。
うつからのリハビリ期の「細切れ目標達成法」が一般的な仕事の処理方法と違うのは、目標達成までの期限を決めないということ。
期限を切ってしまうと焦りが生じ、無理をして回復を遅らせることもあるし、その期限までにできなかった自分に失望することになる。自分の前進を自分で意識することに狙いがある。
⑥私の回復日記
自分ができるようになった、回復してきたことを、メモ書きしておくというトレーニング。
「回復は波。今日できることが明日できなくてもよい。その落ち込みは上がるための必要な落ち込み」
「私の回復日記」は、下りの波が来た時、あの苦しい時期への入り口、この苦しさがずっと続いてしまうかも」という妄想から抜け出す手立てともなる。日記を見ると、悪い時期、そうでもない時期が浮き彫りになる。
悪い時期が一週間前後続くサイクルの人は、下りの波がきても「自分の苦しさは一週間限定」と思えるようになる。
人は、終わりが予測できるとがんばれるものだ。
行動しよう
「誰かのためになりたい」と感じているが、行動が伴わないため、これらの欲求もなかなか満たされない。
この時期のこの矛盾を乗り越えるためには、”葛藤”があっても、とにかく行動に移す”ための工夫が必要となる。
行動すると結果が出る。仮に失敗すれば後悔は残るが、それは次への学習チャンスであり、何よりも持続的は不安を終わらせることができる。
今の苦しい持続的な不安状態を行動によって終わらせ、それを記録することで、”自身貯金”を貯めて、悩んだ時の対処法にする。
ここでは下記2つ方法を紹介する。
⑦7対3でいこう
行動に移すための準備、決断するためのトレーニング
「旅行に行く」か、「行かない」の2択ではなく、参加する時間を遅らせることや
「仕事に復帰したい」、「仕事に復帰しない」というのではなく、一週間は午前中出勤とするなどである。
⑧集中イメトレ
過去の成功体験を十分にイメージし、その次に今取り組んでいる課題が成功した姿を実体験のようにイメージする
リハビリ期は行動しなければならない。行動して初めて自信が回復し、行動してはじめて周囲と関わり、”生きがい”や”自分の価値”を感じる。失敗のイメージはあなたの行動をストップさせてしまう。そんなときは「集中イメトレ」。
過去の成功イメージを思い浮かべるだけども効果がある。
不安なイメージよりも数多く思い出すことがポイントである。
”頓服”を持って街に出よう
薬と同じように、苦しい症状が出た時に同じような効果の期待できるトレーニング。
ここでは頓服として有効な下記2つ方法を紹介する。
⑨癒しのシャワー
著者が薦める効果があり、比較的手軽にできるリラクセーション。
下記の文章を録音したものを聞いたり、家族や友人に呼んでもらう。
心の”引っかかり”を見つけて、それを観察し、「光のボール」を思い浮かべて、そこから「癒しのシャワー」を浴びる。
そしてそれが全身に行き渡る。という手順を踏むこと。
⑩即効ツボ療法
ツボを叩きながら「おまじない」を唱える方法
①私は○○だけれども、そんな自分を完全に受け入れ、愛しいと思います」と「おまじない」を唱えながら、アかイを3回唱えながら叩く
②第一段階で取り上げた症状(○○)をそのまま「おまじない」にする。おまじないを2回唱えるながら、AからLをそれぞれ順番に叩く。
③ウを利き手ではない手で叩きながら、1.目をつぶり(2秒ほど)、2.目を開け(2秒ほど)、3.右下をみる、4.左下をみる、5.右回りに目を動かす、6.左回りに目を動かす、7.ハミングする(好きな曲で)、8.一から五まで声に出して数える、9.7をもう一度
1セット終わった後に、自分の気にしていた症状のことを考えると、あまり感じられなくなっていることが多い。
不安がりの体質改善
<不安のプログラム>が働くとそれ以上に危険な刺激から身を守るために、その刺激があるかないかのチェックが厳しくなる。
<不安のプログラム>が働くと→さらなる危険がないかという視点で世の中を見る→何気ないことがそのように見える→<不安のプログラム>が加速する
<不安のプログラム>を鎮静化するためには、無意識で進む不安のサイクルを”意識的に”止めること。
<不安のプログラム>が原因で「とても危険」と見えている世の中を「それほど危険ではない、比較的安全」な世の中に変える。
最後に不安プログラムの体質改善に有効な3つの方法を紹介する。
⑪いいとこ探し30
意識して世の中の快刺激を見つけるトレーニング。
快適だ(いい感じ、好きだ、心地よい)と思うこと、ラッキーだ、運がいいと思うこと、自分が成長していると思うこと、他人に感謝できること、すごいなと感心できることをできれば30個、見つけたら声に出してみる。
次の波をもっと高くし、回復しきったときの状態をより良いものにするための、”貯金”だと思うこと。
⑫自分取扱説明書
もし同じような症状が起こっても、今度はうまく対処できると思える説明書を作成しておく。
①今回の落ち込みの経験を振り返って、そこからあなたの”精神疲労蓄積の兆候(お酒を飲まなくなった、運動をしなくなった、朝食を食べなくなった等)”を見つけ出すことから始める
②自分の体調や行動の変化を見つけ出したら、それらの変化が出る以前に生活リズムを変えるような出来事を調べる。
該当するライフイベントが見つけたら、次にそのようなことがあるときは、先に見つけた体調や行動の変化(兆候)に敏感になるべきである。
③体調・行動の変化やそれに先行するライフイベントを見つけることが出来たら、記録する。
④「自分取扱説明書」を自分だけでなく家族や仲間にも知らせておく。
⑬私の中の宝物(イメージワーク)
不安対処法
①自分で「悪いほう、悪いほうに考えているな」と気づくこと
②最悪なことを考えさせてくれているあなたの”思い”(あなたを守ろうとしている<不安のプログラム>に声に出して「ありがとう、私を守ろうとしてくれて」と感謝する。
③あなたのこれまでの人生で最も楽しい、あるいは安心したことを思い出す。そのイメージにタイトルをつけて「○○、力を貸してください」と心でつぶやく。
④そのイメージが出来たら、次の操作をする。白黒だったら、カラーに。そのイメージがあなたの中にいるなら、あなた自身で見ているイメージに。イメージが小さい物だったら、画面を大きく。イメージが遠い感じがしたら、画面を近く。イメージが止まっているのだったら、そこから動き出す感じに。
例:小さいこと犬と遊んだシーン、大好きなおばあちゃんに縁側で膝枕をしてもらっている記憶などあなたの中に眠っている宝物をぜひ見つけてほしい。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本書に載っている13の方法を紹介させていただきました。
紹介したものは自分と合わないと思ったら、適当にやって、コロコロ変えてもよいと著者も勧めております。
しかし医者をころころ変えること(ドクターショッピング)は勧めておりません。
自分を受け入れてもらえる”良き理解者”を得ることが治療のきっかけとなります。
治療法やり治療家が、感覚的に「自分に合ってるな」と思うえることが肝心で、それが恢復への第一歩になるのかもしれません。
そして治療には時間がかかることを伝えております。
ストレスや病気というのは悪い物と捉えられがちです。しかし逆にストレスや病気があるときこそ、人生を好転させるチャンスなのかもしれません。病気そのものを”良い物”と認識できれば人生は好転させることができ、その結果人生そのものが変わってくるはずです。
病気というのは、身体が痛みを使って、頑張りすぎて、無理をしていた自分へのメッセージです。
「自分に正直になって、少し休んでください」という。無視をするのではなく、しっかりと向き合うべきものです。
その病気というものを、ポジティブに転換できると人生は大きく変わってきます。
うつをきっかけに人生を好転させる!そう思って、行動してみるのはいかがでしょうか。
実例や体験談などが詳しく本書では書かれているので、もしご興味を持ったものがあれば、ぜひお読みいただければと思います。
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。
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